自己主導権(コントロール)を取り戻すことがQOL向上の鍵
2024年6月27日〜29日にフランスで行われた「国際がんサ
Patient Advocate(患者アドボケート)*の立場で「がんと旅行」をテーマにQOL向上に向けた新しいサポートのアプローチを紹介しました。研究内容を日本語訳にして共有します。
*病院や医療チームと患者とを結ぶ調整役(パイプ役)を担う存在。 「患者支援者」ともいう
がん患者におけるQOL向上の鍵となるのは自己主導権の確立
旅行は多くの人にとって生活の質を高める重要な要素です。がん患者の旅行に関する研究は限られており、特に感情的側面に焦点を当てた研究は少ないのが現状です。この研究ではキャンサージャーニーコーチングのツールを用いて旅行から得たい経験や感情(FUNCTION)を探り、それを実現する代替方法(FORM)を見つけることで、患者さんの選択肢を広げ、自己主導権(コントロール)を取り戻すことができるのか調査しました。
方法
- ウェブベースのアンケートを使用して情報収集
- Cancer Journey Institute 開発のツール「FORM and FUNCTION」を使用したグループインタビュー
結果
- 参加者は6名(日本および米国から)、4名が脳腫瘍、1名が転移性乳がん、1名が卵巣がん。2名が男性、4名が女性で年齢は37〜70歳。
- 100%の参加者が懸念を抱えている。主な懸念は、病気 (n=5)、仕事・キャリア (n=4)、人間関係 (n=3)、恋愛・結婚 (n=3)。
- 6名中4名が旅行を希望している。
- がん診断後、90%の旅行計画が変更、または実現しなかった。これは身体的・心理的な課題、治療後の副作用、病気への恐怖(COVID-19を含む)、自己健康管理の維持に対する不安などが原因。
- 診断前の旅行計画の変更理由は、天候、政治的不安、同行者の病気、予算、スケジュール管理などの外部要因。
- 100%の回答者が海外旅行を避けている。
- 83%の回答者が治療後に旅行している。
- 旅行に関連する経験・感情(FUNCTION)は「生き生きとした感覚」「新しい発見」「個人的成長」「新しい視点」「健康」「感動」など。
- 代替方法(FORMS)は「クラフト」「愛する人とビーチに行く」「近くの温泉に行く」「日記を書く」などが挙げられる。
考察
限られた時間を感じている患者にとっては、即時に実行可能な活動に焦点を当てることが特に重要です。旅行から得たい経験や感情を得るための代替方法の認識を高めることで、患者は自己主導権を取り戻し、がん診断による挑戦に対処しながら独立性を向上させることができます。